少し前に書いたように、高校の物理で教える内容に大きな不満がある。高校で学んだ物理の内容は、果たして大学で学ぶ物理学の「基礎」になっているのだろうか?多分、答えは「ほとんど否」であろう。概念の導入など多少は役に立つところもあるだろうが、微分方程式や行列を使わずに展開した「物理」にどんな発展があるというのだろうか?大量に記憶した公式や問題解法の組み合わせを習得したとしても、「物の理」を理解する助けにはならないのではないだろうか?しかも、せっかく覚えた「物理の公式」も、数学の公式とは異なって、適用限界があることを認識した教育になっていないため、物理で大切な考え方が抜け落ちた教え方になってしまっているように見える。
では、大学で学ぶ「本当の物理学」を知っていれば、果たして「高校の物理」は解けるのだろうか?受験生にしてみれば、試験問題を正解し、大学に合格できるかどうかが最大の関心事である。もし「大学の物理」を知っていても、「高校物理」の特殊性に歯が立たないとしたら、高校物理を学んでいる人々に落胆と絶望をもたらすことになるだろう。しかし、「高校物理の学習法」の精神、つまり無数の公式を暗記し、それらをどう組み合わせて問題を解くかという方法論のみの習得、を続ければ続けるほど、学問追究に対する精神の摩耗は激しく、せっかく大学に入った頃には、物理学を学習しなおし、正しい物理学を習得しようとする余力が残っていない状態となってしまうだろう。これを防ぐためには、高校時代から「正しい物理学」を習得し、それをもとに問題にあたれば「受験物理」はさらさらっと解けるのである、ということを示していきたいと思うのである。
2017年, 2018年の物理の入試問題で、複数の不備が出たことは記憶に新しいと思う(阪大も京大も、音波の問題だったと思う)。これは、実際の研究現場で用いる「真の物理学」では使わないような、馴染みのないような概念が「高校物理 」では熱心に教えられているのが原因にあるのではないだろうか?現代物理ではあまり使わない概念、古びてしまった概念などが高校物理でいまだに中心的に教えられている可能性がある。もちろん、それらの古い概念が現代物理への基礎になっていれば学ぶ価値はあるとは思う。そのような可能性の有無についての検討は必要なことだろうと思う。
このブログでは以上の点に着目しつつ、高校の物理を大学の物理の観点から解いていこうと思うのである。
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