2018年3月22日木曜日

運動量と運動方程式

高校物理では、運動方程式を
\[\begin{equation}
\vec{F}=m\vec{a}
\label{eq-motion-dum}
\end{equation}\]
と教える。しかし、これは運動方程式の「特別な場合」であり、より一般的な表現とはなっていない。

そもそもNewtonが提示した、本来の運動方程式は、運動量\(\vec{p}\)を用いて
\[\begin{equation}
\vec{F}=\frac{d\vec{p} }{dt}
\label{eq-motion}
\end{equation}\]
という形をしている。したがって、物理を習うとするならば、上の式(\(\ref{eq-motion}\))を最初に習うべきなのである!

非相対論的な古典力学では、運動量は速度ベクトルに比例する量として定義される。つまり、「運動の量」とは「速度」であるということだ。これは経験的に見つけたものかもしれないが、ガリレオによる様々な実験により「実証」された概念だと考えてよいと思う。ただし、運動の量を速度と言い切らなかったところに、ガリレオやニュートンら中世の物理学者たちの素晴らしさがある。そして、その比例係数として、「慣性質量」mを持ってきたのも素晴らしい発見だったと思う。

さらにニュートンは、力を定義するにあたり、それが「速度の時間変化に比例する」とは書かず、「運動量の時間変化である」と言い切ったところが素晴らしい。この考え方により、力学の将来に向けての発展性(解析力学や量子力学)が約束されたといっても過言ではない。

さて、では高校物理でならう「運動方程式」とはなんなのだろう?それは、質点のようなものを考え、その質量が運動の過程中に変化しない「特別な場合」を想定したときに成立する方程式である。つまり\(dm/dt=0\)ということである。多段式ロケットの力学を考えるときは、\(dm/dt \ne 0\)であるから、高校物理で教わる運動方程式から出発すると面倒に巻き込まれるか、解けなかったりするだろう。

高校物理では微分を使わない。したがって、式\((\ref{eq-motion})\)は「ご法度」なのである。この無理な要請のせいで、正しい物理の道筋が歪められてしまい、途中から始まるような不自然な形で教えられるのである。このツケは、大学に入ってから払う必要が出てくるが、戸惑う学生が一定の割合で存在する。大学生というのは、若いようでいて、意外に頭が硬くなっている場合もある。高校時代にちゃんとならっておけば、無用なもがきはしなくて済むのに、残念である。鉄は熱いうちに打て、である。

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